chip of wood

新学期

 春は始まりの季節とは言うものの、僕の日常にはさして変化はなく、いつもと同じようにバイトに行って、作詞をしてという生活が続くだけだ。それでも、日に日に暖かくなるし、綺麗な桜が咲くし、少しずつ近づく夏の気配にワクワクしたりする。それだけでもう十分、春は素晴らしい季節だ。
 しかし、学生時代の春にはもっと特別な意味があったと思う。入学式、新学期、新しいクラス、新しい仲間たち、否が応なく環境は代わり、そこには少なからず新しい出会いと新しい世界が待っている。
 当時の僕はいったいどんな気持ちで春を迎えていたのだろう?わずかに残る感情の残滓を手繰り寄せてみる。
 今より幼かった僕はもっと背が低く、桜の木を見上げるように眺めていたのだろう。僕の隣の席に座る人はどんな人なんだろう?担任の先生は優しい人だろうか?新しい下駄箱、新しい教室、明日から始まる未知の生活に心を踊らせていたように思える。
 僕たちは幾つもの始めてを経験して大人になった。知らないことも大分減った。今では未経験なことに対してもそれなりの予想はついてしまう。理解不能な人間などほとんどいないし、驚くような新鮮な出会いなど極まれにしか起こらない。
 自分の内側にも、外側にも、たくさんの未知を抱えている子供たちの目はキラキラしていてとても綺麗だけれど、もはや僕は当時の視界を思い出すことも困難になりつつ有る。これからどんどん僕は年老いて、少年の頃の感覚なんて忘れてしまい、いずれはなかったことになってしまうのかもしれない。
 少しでも思い出せるうちに何か形に出来ればいいなと最近よく考える。
 
 次回のM3でサークルポヤッチオさんが頒布される「プチリズム六」に収録されている「恋するげつようび」の作詞を担当させて頂きました。作曲はy0c1eくん、歌はココさんです。中学生の女の子を主人公に、新学期のドタバタ劇を描かせて頂きました。楽しんで聴いて頂けると嬉しいです。

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