chip of wood

おかのうえ

 あの頃、僕たちは毎日のように集まっていた。あるものは絵を描き、あるものは音を作り、あるものはデザインし、あるものは喋り倒し、みんなで鍋を囲い、みなで語り合った。なかには人間じゃない奴もいた。
 僕たちは本を作った。僕たちは歌を作った。
 
 その内の一人がこの世から去った。その内の一人は僕に絶縁を突きつけた。その内の一人はもはや僕の言葉にそれほど興味を持たなくなった。その内の一人は互いのことがあまり分からなくなってしまったが「僕はとうとう作詞だけじゃなく作曲も少しできるようになったんだよ」と報告したら興味を持ってくれた。その内の一人と先日偶然新宿を自転車で走っている時に出会った。車の運転席から笑顔で僕の名前を呼んでくれた(もっともそれはいまでは他人のように感じる昔の僕の名前だけど)そのうちの一人とはもう2年位言葉を交わしていない。そのうちの一人と僕はいまでも同士で、歌を作る仲間のままだ。
 
 彼らはいま何をしているのだろう。窓から外を見てみる。今日は晴れだ。彼らもきっと晴れの中にいる。彼らがいま空を見上げたら青空だ。それくらいしか僕に分からない。
 幸福な日々だった。僕らの作ったものに世間は興味をそれほど示さなかったけど、それに苦しみも嘆きもしたけど、僕達だって世間にそれほど興味がなかったのだと思う。
 僕達が見ていたのは世界そのものではなく別の何かだったに違いない。少なくとも僕自身についてはそうだったような気がする。
 では僕が見ていたものは幻に過ぎなかったかというと決してそんなことはないのだろう。

 こうして振り返ってみても分からないことばかりで、あの日々から得たものなんて、言葉になることはあるけれど、それに対して意味はなく、言葉にならないことにこそ価値が有るのだろう。

 8人の内、7人はまだ生きている。それはまぁ確かだな。人間じゃないあいつに関しては、生きているも死んでいるもなにも、そもそも生まれた瞬間のままで時間が止まっている。

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