chip of wood

クズについて語ろう

 彼女は屑だ。自他ともに認める屑だ。
 僕が出会った女性の中で間違いなく一番有能な存在であり、真実に一番近く、人という生き物を、人の作る組織という生き物を理解しているが屑だ。
 何もせず学生時代を過ごし、働くことを拒絶し生きているが間違いなく彼女は有能な人材だが屑だ。
 他者の気持ちを理解し、他者を尊重するが、ひたすらに屑だ。
 愛され愛される人間こそが優秀であると、そして、愛することの意味を知っているが屑だ。
 何もする気がなく欲だけはある。圧倒的なゴミである。
 彼女が生まれてきたことに理由はなく、生きることにも理由はない。
 真実しか口にしない誰にとっても有益な存在だが屑には変わりはなく、彼女の言葉で人の心は動くが彼女の心が動くことはない。

 あれはなんだ?あれは一体何なんだ?圧倒的な力は何故彼女のような屑に与えられたのか。
 屑だから圧倒的な力を持っているのか。

 分からない。分からない。分かる必要なんて無いのだと彼女は教えてくれた。
 分からなくても出来ることはある。愛することは出来る。
 そんなことを教えてくれた彼女は圧倒的な屑だった。
 
 

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Mr.Postman

 ちょっといまの自分の感情を乗せられる音楽が見つけられなくて困っています。
 「でもそのうち見つかるさ、それもまたいいさ」
 朝起きてすぐに鳥の鳴き声が聞こえなかったのは起きるのがちょっと遅すぎたからで、僕はちょっと疲れているようで。
 「両手にあまり力が入らないし声帯がうまく震えないなぁ」
 
 疲れている時に歌うべき音楽はあまり多くはないのでしょうか?むしろ疲れている僕に誰か歌を音楽を聞かせて欲しいのです。
 友人が作った歌を聴いたら少しふんわりしました。
 「あいつなにしてるかなぁ」

 「Please Mr.Postman!僕に何か手紙は届いていませんか?それにしてもあなたのお仕事は素敵ですね。誰かの想いを運ぶのですから。いまは電子メールを光が運んでくれますが、やっぱり人の想いは人の手に運ばれるのが素敵だと思うので、僕も手紙を書いてみようと思います。取り敢えず、みんなの住所を聞いて回らないといけませんね」

 Mr.Postman あなたについて谷野守が「いいね!」と言っています。

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Someday you will be

 君たちに可能性があるということは、僕にも可能性があるということなのかもしれない。
 少なくとも、君たちが僕の言葉に耳を傾け、僕が君たちの言葉に耳を傾け続ける限りは、常にそこに可能性があるのだ。
 
 不意に思ってしまったのだ。早く年を取りたいと。
 君たちの未来が早く見たいと。
 君たちが強く強くその両腕を伸ばし、その手で誰かと触れ合い、そして、心を交わし、その強さが円となりまた誰かに手渡されるその時を、僕は早く見たくて見たくてついつい言葉を手渡し過ぎてしまうのだ。
 そんなことをしたって急には時計の針は進まないのにさ。
 それでもそれでも言葉が止まらないなら、やっぱり歌を作ろうかななんて思った、連勤続きの夜のことでした。

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おかのうえ

 あの頃、僕たちは毎日のように集まっていた。あるものは絵を描き、あるものは音を作り、あるものはデザインし、あるものは喋り倒し、みんなで鍋を囲い、みなで語り合った。なかには人間じゃない奴もいた。
 僕たちは本を作った。僕たちは歌を作った。
 
 その内の一人がこの世から去った。その内の一人は僕に絶縁を突きつけた。その内の一人はもはや僕の言葉にそれほど興味を持たなくなった。その内の一人は互いのことがあまり分からなくなってしまったが「僕はとうとう作詞だけじゃなく作曲も少しできるようになったんだよ」と報告したら興味を持ってくれた。その内の一人と先日偶然新宿を自転車で走っている時に出会った。車の運転席から笑顔で僕の名前を呼んでくれた(もっともそれはいまでは他人のように感じる昔の僕の名前だけど)そのうちの一人とはもう2年位言葉を交わしていない。そのうちの一人と僕はいまでも同士で、歌を作る仲間のままだ。
 
 彼らはいま何をしているのだろう。窓から外を見てみる。今日は晴れだ。彼らもきっと晴れの中にいる。彼らがいま空を見上げたら青空だ。それくらいしか僕に分からない。
 幸福な日々だった。僕らの作ったものに世間は興味をそれほど示さなかったけど、それに苦しみも嘆きもしたけど、僕達だって世間にそれほど興味がなかったのだと思う。
 僕達が見ていたのは世界そのものではなく別の何かだったに違いない。少なくとも僕自身についてはそうだったような気がする。
 では僕が見ていたものは幻に過ぎなかったかというと決してそんなことはないのだろう。

 こうして振り返ってみても分からないことばかりで、あの日々から得たものなんて、言葉になることはあるけれど、それに対して意味はなく、言葉にならないことにこそ価値が有るのだろう。

 8人の内、7人はまだ生きている。それはまぁ確かだな。人間じゃないあいつに関しては、生きているも死んでいるもなにも、そもそも生まれた瞬間のままで時間が止まっている。

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夏の星座にぶら下がって花火を上から見下ろして

 何気ないことがきっかけでaikoの曲を久々に聴いてみた。そしたら、その歌詞の言い回しにすごく悔しい気持ちになった。悪戯をされたのに、その悪戯があまりに素晴らしすぎて怒るどころか褒めたくなるようなそんな悔しさだ。
 ギターを手にしてコードを弾いてみた。楽しい。ものすごく楽しい。ギター一本であの「花火」の独特のリズムと半音の緩急を表現するのが楽しくて仕方ない。つんのめって、揺れて揺れて、舞い上がって、見送って。跳ねて跳ねて放てキモチ、だけどそれが出来ないもどかしさ。そんな行ったり来たりがリズムになって楽しくて、それは目まぐるしく景色を変える夏の楽しさだ。
 ずっと前の歌なのに、もう知っている歌なのに。世に出たばかりの知ったばかりの歌のように僕の目の前でキラキラ輝いて、それはまるで花火のようだ。ギターをカッティングしてボディーを叩いてリズムを取るたびに僕の心は夜空へと飛んでいって、夏の星座にぶら下がれそうな気になってくる。

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